
浮気する男たちの本音と孤独 欲望ではなく「つながり」を求める心のメカニズム
2025.04.10本記事では、社会学者アリシア・ウォーカー博士による調査を通じて、男性が浮気をする真の理由を探ります。性欲だけでなく、自己肯定感の低下、パートナーとの断絶、愛情不足などが複雑に絡み合い、浮気は「逃避」ではなく「補完」の手段として機能していることが明らかになっています。現代の男女関係に潜む構造的課題も浮き彫りにされ、単純な倫理観では語りきれない浮気の実態が浮かび上がります。
本記事は、Viceに掲載された以下の記事内容をもとに構成されています。
Why Men Cheat: The Truth About Male Infidelity
執筆:アリシア・ウォーカー(Alicia Walker)博士の研究内容に基づくインタビューおよび考察を含む。
浮気の陰にある「見えない孤独」
「浮気する男は、ただ性欲をコントロールできないだけだ」。
そんな短絡的なイメージを、あなたも一度は抱いたことがあるかもしれません。しかし、アリシア・ウォーカー博士の調査によって、そのような認識がいかに表面的であるかが明らかになっています。
ウォーカー博士は、数十人以上の既婚男性に対して匿名インタビューを実施。そこから見えてきたのは、性行為そのものよりも、感情的なつながりや承認欲求を求めて浮気に走る姿でした。
彼らが浮気相手に求めていたのは、セクシャルな満足だけではなく、次のような要素です:
- 自分の存在を認めてくれる会話相手
- 感謝や賞賛を示してくれる人間関係
- 家庭内で失われた「自分らしさ」を取り戻せる場
このようなニーズは、一見すると子どもっぽく聞こえるかもしれませんが、実際には多くの男性が孤独と無力感にさいなまれていることの証左です。
「別れたくないから浮気する」という矛盾
意外なことに、多くの浮気経験者は配偶者との関係を「壊したくない」と語っています。
ウォーカー博士の調査に登場したある男性はこう言いました。
「浮気してなかったら、家庭はもう壊れていたと思う。」
この言葉にこそ、男性の浮気行動の複雑さが表れています。つまり、浮気は愛が冷めたから起きたのではなく、愛やつながりを失わないための選択だったということです。
家庭内で孤独を感じながらも離婚には踏み切れない。そうした「関係の袋小路」に追い込まれたとき、彼らは外の世界に慰めを求めるのです。
性的満足よりも「共感」を求めて
ウォーカー博士の研究では、浮気相手との間に「会話の充実」や「共感的なやりとり」があることが共通して報告されました。つまり、浮気相手は単なる性の対象ではなく、心のセーフティネットなのです。
多くの男性は、配偶者に対して本音を話すことができず、日常会話が「連絡事項の伝達」だけになってしまっていると語っています。これは、単なる夫婦間のすれ違いではなく、男性が社会的に感情表現を抑圧されてきた構造的問題にも関係しています。
男性性と社会の期待が生む「感情の不感症」
「男は強くあれ」「泣くな」「家庭を支えろ」――
日本社会に限らず、多くの文化で男性に求められるこうした「男らしさ」は、彼らから感情の発露を奪い、内面の葛藤を無視する構造を作り上げています。
浮気に走る男性の中には、「パートナーに弱音を吐けない」「感情的な問題を話し合うこと自体が恥ずかしい」と感じている人が少なくありません。その結果、彼らは自分の孤独や不満を内に溜め込むか、外部の他者に求めるしか方法がなくなるのです。
この背景には、ジェンダー構造の硬直性と、家庭内での感情的労働の偏りも見え隠れしています。
女性の浮気との違い
ウォーカー博士は、女性の浮気に関する研究も進めており、そこからは男女の浮気動機に明確な違いが見られます。
- 男性の浮気は、「家庭を維持するための補完的行動」
- 女性の浮気は、「関係性への失望や自立の表明」
女性の場合、浮気をきっかけに離婚を決意するケースが多く、一方の男性は「関係を終わらせたくないが、今のままでは耐えられない」という矛盾を抱えながら浮気に走ります。
この違いは、性差というよりも、社会がそれぞれの性に与える期待値の違いに由来するものと言えるでしょう。
「浮気=悪」とは言い切れない現実
もちろん、浮気は信頼関係の破綻であり、正当化されるべき行為ではありません。しかし、それを一律に「悪」と断罪するだけでは、そこに至った当人の内面や社会背景を理解することはできません。
ウォーカー博士の研究は、浮気という行動の背後にある深層心理を言語化し、私たちにより多角的な視点を与えてくれます。
そしてそれは、浮気の是非という道徳論ではなく、「人と人がどうすればつながり続けられるか」という問いへと私たちを導きます。
おわりに
浮気に関する議論は往々にして感情的になりがちですが、アリシア・ウォーカー博士の研究は、その複雑な背景を冷静かつ客観的に照らし出しています。
性の問題ではなく、共感と承認、そして会話の欠如が、多くの男性を浮気という選択へと駆り立てているのです。
そしてこれは、「浮気をしない男性」にとっても他人事ではありません。
パートナーシップにおける感情的なつながりの重要性、会話の質、そして心の健康こそが、健全な関係の礎になるという事実を、改めて認識させられる研究内容でした。
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