
嫉妬の進化心理学:男女の嫉妬はなぜ違うのか?
2025.03.20嫉妬はこれまで病理的な現象や社会的産物として説明されてきましたが、近年の進化心理学は「大切な関係を守るために進化した感情」と捉えています。嫉妬は男女共通の基本的な性質を持つ一方、性的な裏切りに敏感な男性、感情的な裏切りに敏感な女性といった性差も確認されています。この記事では、研究に基づいて嫉妬のメカニズムを分かりやすく解説します。
嫉妬はなぜ起こる?進化心理学の新しい視点
嫉妬とは、愛するパートナーを失う危険を感じたときに発動する感情です。かつては精神的な問題や社会的要因とされていましたが、最近では「進化の過程で生まれた自然な感情」として捉えられるようになっています(Buss & Haselton, 2005)。つまり、嫉妬はパートナーとの関係維持に役立つ重要な機能を持つのです。
嫉妬は人間の進化史の中で、関係性を維持し子孫を残すために役立ってきました。そのため、この感情を完全に排除することは難しく、むしろ適切に扱う方法を学ぶことが重要です。
男女に共通する嫉妬の特徴
男女ともに共通する嫉妬の特徴として、魅力的なライバルが現れたり、自分の価値がパートナーより低いと感じたりすると、嫉妬心が高まることがわかっています。また、浮気や離別の可能性を察知した際に強く反応し、これを防ぐために行動を起こす動機にもなっています(Buss, 2000)。さらに、パートナーが他の異性に興味を持っている兆候を敏感に察知し、相手への愛情表現を増やしたり、嫉妬を表現したりする行動が見られます。
男女で異なる嫉妬のメカニズム
一方で、嫉妬の感じ方には男女で明確な違いがあります。
男性はなぜ性的裏切りに敏感か
男性は生物学的に「自分の子孫かどうかの不確実性」という問題を抱えているため、性的な裏切りに特に敏感になります。男性は性的な裏切りの兆候を鋭く察知し、それを強く記憶しやすく、許しにくい傾向があります(Schützwohl & Koch, 2004)。これは自分の遺伝子を確実に残すための進化的戦略なのです。男性はまた、パートナーが排卵期にある際、より強く嫉妬心を感じ、相手への注意や警戒心を高めることも研究で示されています(Gangestad et al., 2002)。
女性はなぜ感情的裏切りに敏感か
女性の場合、進化上の課題はパートナーからの安定したサポートやコミットメントを維持することにあります。そのため、パートナーが別の相手に感情的に惹かれることに対し、より敏感に反応します。実際に女性は感情的な浮気のサインを強く記憶し、深い不安やストレスを感じやすいと報告されています(Schützwohl & Koch, 2004)。女性はまた、ライバルが自分よりも身体的に魅力的であると感じた場合に、特に強い嫉妬を抱きやすくなります。
日本人にとっても身近な問題
日本の調査でも同様の傾向が確認されています。女性はパートナーの感情的浮気に強い不快感を覚える一方、男性は身体的浮気を許し難いと感じることが多く報告されています(Buss et al., 1999)。日本の社会では安定した経済力や社会的地位が特に重要視されるため、男性はライバルの地位や経済力に敏感に反応することも珍しくありません。また、SNSなどの普及により、嫉妬の要因や表現方法も変化しています。
嫉妬を理解し、より良い人間関係を築くために
嫉妬は決して悪い感情ではなく、人間が大切な関係を維持するために必要な感情です。重要なのは嫉妬の感情に巻き込まれないよう、適切に向き合うことです。男女で嫉妬のポイントが異なることを理解することで、相手をより深く理解し、良好なコミュニケーションを築けるでしょう。
嫉妬を理解し、それをうまくコントロールすることが、より良い関係性を築く鍵になるのです。
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